波が重なると、それぞれ波の和が実際には現れる。これを波の重ね合わせの原理という。また、一度重なってしまった波も、その後は何の影響も残さずに通り抜けてしまう。これを波の独立性という。どちらも波特有の性質だ。とりあえず観察してみよう。
・山と山
・山と谷
動いていると分かりにくいので、重なっているときの様子を詳しく描いてみた。左側の図は山と山が、右側の図は山と谷が重なっている様子を表している。ちょうど重なっている部分の変位だけ、元の波の和になっていることを分かってもらいたい。ちなみに、複数の波が重なって現れた波を合成波という。
さっきはパルス波の重ね合わせを考えたが、今度は連続波、特に正弦波の重ね合わせを考えてみよう。
水色の正弦波は右向きに、緑色の正弦波は左向きにそれぞれ移動していて、赤色の波はそれらの合成波である。ここで確認しほしいのは、この合成波は左右のどちらに進むこともなく、その場で振動を繰り返しているだけということ。このような波を定常波(定在波)という。また、水色の波や緑色の波のように、一定方向に進む波のことを進行波という。
さて定常波だけに目を向けてやると、その定常波を作っている媒質の中には、全く動かない点●と非常によく振動している点○があり、それらが等間隔で並んでいるということに気が付く。この全く動かない位置●を定常波の節(ふし)、最も大きく振動している位置○を定常波の腹という。
定常波の特徴は元の波の波長、振幅、周期で決まる。元の波(水色)と比較してみると、
になっていることが分かる。どれも定常波の大事なポイントなので、必ず理解してほしい。
問題
図のように、同じ振幅、同じ波長の正弦波が、同じ速さで逆向きに進んで定常波を作っている。このとき、A点とB点はそれぞれ腹と節のどちらになっているか答えよ。
→定常波は逆向きに進む進行波の合成波だから、上の図の合成波を描いてみると、
すべての媒質の変位が0になってしまい、節と腹の判断ができない。そこで、1/4周期だけ時間を進めてみると、
となるので、Aが定常波の節、Bは定常波の腹になっていると判断することができる。
ロープを伝わる波が端に到達すると、波は反射して戻ってくる。ただしその反射の仕方には2種類あって、端が自由に動ける場合を自由端反射(左)、固定されている場合を固定端反射(右)という。
自由端に波が入射するとき、山は山のまま、谷は谷のまま反射して戻ってくる。このときの入射波と反射波は、中心軸に対して線対称な関係になっている。
一方、固定端に波が入射するときは、山が谷に、谷が山に変化して戻ってくる。このとき、入射波と反射波は固定端を中心とした点対称な関係になっている。
最後に、正弦波を考えたときの入射波と反射波、そして合成波を描いてみよう。
上側が自由端、下側が固定端が作る合成波を示している。どちらも定常波を作っていることが分かるだろうか。ただし、よく見ると腹の位置と節の位置が異なっていることに気を付けよう。自由端は定常波の腹、固定端は定常波の節になっている。固定端の媒質は固定されていて動けないのだから、節以外になることはあり得ない。間違えないように。