宇宙と地球


宇宙の大規模構造

 地球は太陽系に所属する惑星で、太陽のようにみずから光り輝く天体を恒星と呼ぶ。太陽系は、太陽のような恒星が集まった銀河系の一部にあたる。銀河系にはバルジと呼ばれる直径約2万光年の中心部と、直径約10万光年の円盤部、その周辺を直径約15万光年のハローが取り囲んでいる。約2000億個の恒星が円盤部に分布している。ハローには200個ほどの球状星団が分布している。球状星団は、直径約100光年の空間に10万~1000万個の星が密集した集団のことである。天の川に沿ってみられる星団は散開星団と呼ばれ、1500個ほどが確認されている。銀河系の中心は地球から見ていて座の方向にあり、太陽系は中心から2.8万光年ずれた位置にある。銀河系の中心には巨大なブラックホールがあると言われており、太陽系は銀河系を2億4000万年かけて一周している。銀河には、楕円銀河、渦巻銀河、棒渦巻銀河、不規則銀河に分けられている。銀河系から約20万年の距離に大マゼラン雲と小マゼラン雲という2つの不規則銀河があり、230万光年の距離にアンドロメダ銀河と呼ばれる渦巻銀河がある。これらを中心とした直径600万光年の領域には40個以上の銀河があり、局部銀河群と呼ばれる。一般に、数個~数十個の銀河の集団を銀河群、100個以上の集団を銀河団と呼ぶ。銀河群や銀河団の集まりを超銀河団と呼び、超銀河団は宇宙に均一に分布しているわけではなく、密度に差がある。このような分布構造を、宇宙の大規模構造と呼ぶ。

宇宙の誕生

 1929年にハッブルはほぼすべての銀河が遠ざかっていること、遠い銀河ほど速く遠ざかっていることを発見した。また、ガモフは膨張する宇宙を逆にたどると、138億年前に宇宙は超高温・高密度の状態から爆発的に膨張することで始まったと考えた。これを、ビッグバンと呼ぶ。宇宙が誕生して10万分の1秒後に陽子や中性子が生まれ、5分後にヘリウムの原子核ができた。38万年後に温度が3000ケルビンまで下がると、水素原子ができて光が直進できるようになった。これを宇宙の晴れ上がりと呼ぶ。現在の宇宙はこのときの1100倍になっており、光の波長の1100倍になっている。この波長は2.7ケルビンの物体から出てくる波長と一致していて、これを宇宙背景放射と呼ぶ。宇宙は膨張することで冷えていき、物質の分布にムラが生じ、宇宙誕生から3億年後に密度が高い部分で最初の恒星が生まれた。恒星が寿命を迎えると、恒星の内部で作られた重たい元素は星間空間にまき散らされ、その星間ガスから新しい恒星が生まれた。その後、今から46億年前に太陽が生まれた。

太陽の活動

 太陽の半径は地球の109倍、質量は33万倍あり、太陽系全体の質量の99.86%を太陽が占めている。核融合反応が起きている太陽の中心部を中心核、中心核で生じたエネルギーが熱放射で伝わる層を放射層、その外側のエネルギーが対流で伝わる層を対流層と呼ぶ。太陽の表面の白く見える厚さ300kmの大気層を光球と呼び、周縁に向かうほど暗く見えることを周辺減光と呼ぶ。温度の低い黒点と、温度の高い白斑がある。黒点の数は約11年周期で変動し、黒点の数が極大の時期を太陽活動の極大期と呼ぶ。太陽はガス体のため、赤道付近のほうが極付近よりも速く自転している。光球の表面にある大きさ1000km程度の粒状の模様を粒状斑と呼び、エネルギーが対流していることを示している。光球の周囲にある厚さ2000kmの層を彩層といい、皆既日食のときに薄いピンク色に見える。彩層の上部からはスピキュールと呼ばれるジェットが、コロナに向かって噴出している。コロナは100万ケルビン以上の大気で、原子はプラズマ状態になっている。このプラズマが宇宙空間に流れ出たものを太陽風と呼び、地球の極地方の大気を発光させることでオーロラが現れる。コロナ中に磁場の力で浮かぶガスの雲をプロミネンスと呼ぶ。彩層やコロナの一部が突発的に多量のエネルギーを放出して明るくなる現象をフレアと呼ぶ。太陽活動の極大期にはフレアの発生も多くなり、フレアからは強烈なX線や紫外線が放射されるため、これらが地球に届いてデリンジャー現象と呼ばれる短波通信障害が起こる。フレアの発生によりプラズマの塊が放出されることをコロナ質量放出と呼び、地球の磁場が変形したりする。これを磁気嵐と呼ぶ。

恒星の一生

 恒星の間には星間ガスと呼ばれる気体や、星間塵と呼ばれる0.1マイクロメートルの微粒子が存在しており、これらを星間物質という。星間物質が濃い部分は星間雲と呼ばれ、特に濃い部分には分子が存在するため分子雲と呼ばれる。恒星は星間雲が自身の重力で収縮することでエネルギーを放出する原始星として誕生する。中心温度が1000万ケルビンを超えると核融合が始まり、安定な主系列星になる。太陽は4000万年かけて主系列星になり、100億年間主系列星として活動する。中心にヘリウムの核ができると、その外側で水素の核融合反応が起こるようになり、膨張して温度が下がって赤色巨星になる。中心の温度が1億ケルビンを超えると炭素や酸素が作られるようになる。その後、ヘリウムが燃え尽きるころには全体が収縮して放出されたガスは惑星状星雲に、中心は地球と同じくらいの大きさの白色矮星になる。太陽の8倍以上の重たい星では炭素や酸素がさらに核融合反応し、ネオンやマグネシウム、ケイ素や鉄などが作られる。中心部が40億ケルビンを超えると鉄がヘリウムと中性子に分解され、エネルギーを周囲から吸収するようになる。すると温度が急に下がって圧力が低くなり、星自身の重さが支えられずに中心に押しつぶされる。その反動で外装部が激しく吹き飛ぶ現象を超新星と呼ぶ。中心部は超高密度のため電子が陽子に押し込まれて中性子になって中性子星ができる。中性子星は半径10kmで質量が太陽と同じくらいだが、太陽質量の30倍以上では中性子星が安定に存在できず、収縮が続いてブラックホールができる。

恒星の明るさ

 恒星の明るさは等級で表し、地球上からの恒星の明るさを見かけの等級と呼ぶ。こと座のベガの明るさが基準の0等級で、その100分の1の明るさが5等級である。1等級小さいと約2.5倍明るい。太陽の見かけの等級は-26.7等級だが、恒星をすべて同じ距離に置いたときの明るさである絶対等級だと、太陽は4.8等級になる。年周視差1秒の恒星までの距離を1パーセクと呼び、絶対等級の基準の距離は10パーセク(=32.6光年)である。恒星の表面温度は青白いほど高温、赤いほど低温である。恒星から出る光のうち、最も強い光の波長と絶対温度の間には反比例の関係があり、これをウィーンの変位則と呼ぶ。放出されるエネルギーが絶対温度の4乗に比例する問う関係をシュテファン・ボルツマンの法則と呼ぶ。太陽光のスペクトルに表れる吸収線をフラウンホーファー線と呼ぶ。このようなスペクトルは吸収線の違いによってOBAFGKMの7種類に分けられていて、O型が最も高温、M型が最も低温である。太陽はG型。縦軸に絶対等級、横軸にスペクトル型を取ったグラフをヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)と呼ぶ。

太陽系の惑星

 すべての惑星が同じ平面上を同じ向きに公転している。この面を公転軌道面と呼ぶ。水星、金星、地球、火星を地球型惑星と呼び、主に岩石からできており、小さい代わりに密度が大きく、自転周期が長い。木星、土星、天王星、海王星を木星型惑星と呼び、大きい代わりに密度が小さく、リングがあって多くの衛星を持つ。木星と土星はガス惑星、天王星と海王星は氷惑星である。

 水星は最小の惑星で、表面はクレーターで覆われており、大気はほとんどない。離心率が最大。巨大な金属の核がある。金星は地球と大きさがほとんど同じだが、二酸化炭素を主成分とする90気圧の大気があり、温室効果によって460℃にもなっている。自転と交転の向きが逆で、自転周期が243日もある。上空に吹く100m/sの風はスーパーローテーションと呼ばれる。火星は地球の半分ほどの半径で、自転周期は地球とほぼ同じ。二酸化炭素が主成分の0.01気圧の大気がある。酸化鉄のため地表が赤い。木星は最大の惑星で、表面は-150℃、自転周期は最短の9時間55分。鉄や岩石の核、金属と水素の層のまわりに水素とヘリウムの大気がある。大赤斑という大きな渦がある。土星は最も密度が小さい。リングは氷の粒で、幅は7万kmだが厚さは1km未満。天王星は横倒しで自転している。公転周期が84年と長く、極地方では昼や夜が42年間続く。青く見えるのはメタンが赤色の光を吸収しているため。海王星は太陽から最も遠く、表面温度は-220℃と低い。天王星よりも青いのはメタンの量が多いため。

太陽系の天体

 太陽系は太陽と惑星のほか、衛星、小惑星、水星、塵などからなる。惑星の自転と同じ向きに運動している衛星を順行衛星、逆向きに運動している衛星を逆行衛星と呼ぶ。軌道面が惑星の赤道面にほぼ並行で離心率が小さい衛星を規則衛星、それ以外を不規則衛星と呼ぶ。火星の衛星は2つ、木星の衛星は95個、土星の衛星は146個が見つかっている。月は地球の4分の1ほどの大きさで、白っぽくクレーターの多い高地と、黒っぽく平坦な海がある。木星の衛星イオや海王星の衛星トリトンには火山活動が確認されている。木星の衛星エウロパの内部には液体の水の海が期待されている。土星の衛星タイタンには1.5気圧のメタンの大気がある。小惑星は不規則な形の岩石質の天体で、50万個以上あり、ほとんどが火星~木星の間の小惑星帯にある。ほとんどが直径100km以下で、最大のケレスが940kmである。海王星よりも外側には太陽系外縁天体があり、冥王星を含む1000個以上見つかっている。太陽系外縁天体が集まるベルト状の領域はエッジワース・カイパーベルトと呼ばれ、オールトの雲の中を彗星が運動している。彗星は太陽に近づくと氷の核が温められ、太陽と逆向きに尾ができる。

惑星の運動

 惑星が西から東へ移動することを順行、逆向きに移動することを逆行と呼び、順行と逆行が切り替わるときを留と呼ぶ。外惑星が太陽の向きにあるときを合、太陽と反対向きにあるときを衝と呼び、衝のときに外惑星の逆行が起こる。内惑星が地球に最も近いときを内合、最も遠いときを外合と呼び、内合のときに内惑星の逆行が起こる。外惑星の衝から次の衝までの時間や、内惑星の内合から次の内合までの時間を会合周期と呼び、火星の会合周期は780日、金星の会合周期は584日である。

地球の自転

 地球の自転により、太陽は24時間で同じ位置に戻ってくる。ただし、自転に加えて太陽の周りを公転していることで、遠くの恒星は24時間よりも早く元の場所に戻ってくるように見える。1日当たり約1度ずつ公転するため、このずれは24時間の365分の1、約4分間である。太陽や恒星が運動する見かけの球体を天球と呼び、天球上の太陽の通り道を黄道と呼ぶ。黄道面は赤道面に対して23.4度傾いている。この傾きがなく、天の赤道上を1年で1周する仮想太陽(平均太陽)を考えると、この太陽が南中して次に南中するまでの時間を1太陽日と呼ばれる。1太陽日を基準にした時刻を平均太陽時と呼び、実際の時刻を視太陽時、それらの差を均時差と呼ぶ。ロンドンのグリニッジ天文台の平均太陽時が基準の時刻を世界時と呼び、日本標準時は世界時よりも9時間進んでいる。セシウム原子の振動回数によって定義される時間は原子時と呼ばれる。地球の自転は徐々に遅くなっているため、ときどきうるう秒が導入されていた。黄道が天の赤道を南から北へ横切る点を春分点と呼び、春分点を通過した太陽が次の春分点を通過するまでの時間を1太陽年と呼ぶ。1太陽年(365.2422日)を元に作られる暦が太陽暦だが、365日ではないので400年間で97回のうるう年を設けて調節している。