仕事と仕事率


仕事


 力による効果や影響を表す量に「仕事」がある。一般に仕事といえばお金をもらうために頑張って行うことだが、物理でいう仕事はどのように決められているのだろうか。

 

 力による効果や影響が分かりやすいのは、物体を動かしたときだ。物体に力を加えてその物体が移動したとき、力の大きさと移動距離との積を「仕事」という。

力の大きさの単位に〔N〕を、移動距離の単位に〔m〕を用いたとき、仕事の単位には「ジュール(記号J)」を用いる。電力量や熱量と同じ単位だ。仮に100Nの力を加えて2m移動させた場合、この力がした仕事は100×2=200〔J〕ということになる。計算はとても簡単なので、しっかり覚えよう。

 

仕事の原理


 重さ10Nの物体を鉛直上向きに一定の速さで(力のつり合いを保ちながら)1m持ち上げるとしよう。持ち上げるためには10Nの力が必要で、移動距離が1mだから、この力がした仕事は10×1=10〔J〕である。

 同じ物体を、今度は傾き30°の斜面を使って移動させることを考えよう。重力には斜面方向の成分があるから、これを計算すると5Nとなる。斜面に沿って物体を運ぶためには、同じく大きさ5Nの力が必要である。斜面を使わないときに必要な力が10Nだったから、斜面を使うことで、物体に加える力を半分にすることができるのだ。ところが、斜面に沿って1mの高さまで物体を移動させるわけだから、移動距離は2mになってしまう。仕事は5×2=10〔J〕である。これは、斜面を使わないときと等しい。

 

 天井に固定された定滑車と、宙ぶらりんの動滑車を使って重さ10Nの物体を1m持ち上げる。このとき、糸を引く力は物体の重さの半分の5Nでよい。しかし、物体の上昇距離の2倍の2mの糸を引かなくてはならない。仕事は5×2=10〔J〕である。動滑車を用いることで力を小さくすることができるが、やはり仕事は変わらない。

 

 てこを利用しても同じだ。物体から支点までの長さの2倍の長さの位置を押し下げることで、物体の重さの半分の力で物体を持ち上げることができる。しかし、物体の上昇距離の2倍の長さを押し下げなければいけない。つまり、やはり仕事は変わらない。

 つまり、斜面や道具を用いて力を小さくしても、仕事は変わらない。これを「仕事の原理」という。

 

仕事率


 電気エネルギーの紹介ページで、電力量と電力について学んだ。その関係は、電力量〔J〕=電力〔W〕×時間〔s〕だったことを思い出そう。ちなみに、電力〔W〕=電力量〔J〕/時間〔s〕は、1秒間あたりの電力量と言える。また、電力量の単位は仕事と同じ〔J〕だから、電力量は電源や電流が電気器具に対してした仕事ということができる。仕事〔J〕/時間〔s〕という量によって、1秒間あたりの仕事が得られるのだ。これを「仕事率」と呼ぶ。単位はワット(記号W)である。