加速度


 速くなることを加速、遅くなることを減速という。このとき、どのくらい速度が変化するかの度合いを表す量を加速度という。今回はこの加速度について詳しく見ていこう。

加速度


 10m/sで走っていた自動車の速度が同じ向きに15m/sになった場合と、15m/sで走っていた自動車の速度が同じ向きに25m/sになった場合を比較する。どちらの方が「より加速したか?」といえば後者だろう。理由は、「速度の変化量が大きい」からだ。

 

 では、前者の速度が5m/s増加するのに2.0秒間を要し、後者の速度が10m/s増加するのに10秒間を要したとしよう。するとどうだろう。「より加速した」という感じがするのは前者になる。理由は、加速に要した「時間が短い」からだ。

 

 このことを踏まえて、加速の度合いを定義しよう。速度の変化量Δv(m/s)が大きいほど、要した時間Δt(s)が短いほど大きくなるような量を考えてやればいい。

これを「加速度」という。〔m/s〕を〔s〕で割っているので、加速度の単位は〔m/s2〕となり、これをメートル毎秒毎秒と読む。この単位は「1秒間あたり何m/s速度が変化するか」を表していることが分かるだろうか。速さや速度と比較をすると、加速度は次のように定義することもできる。

  • 加速度の定義…単位時間あたりの速度の変化量

 

 では、計算練習をしてみよう。例えば、2.0秒間で速度が5.0m/s変化したとき、その加速度は、 

となる。続いて、10秒間で速度が15m/sから25m/sに変化したとき、その加速度は、

となる。速度の変化量Δvの計算が「あと-まえ」になっていることに注意しよう。最後に、3.0秒間で速度が20m/sから5m/sに変化したとき、その加速度は、

となる。負の値が出てきたのは、減速しているから。運動の向きを正の向きとすると、加速しているときの加速度は正の値で、減速しているときの加速度は負の値になる。覚えておこう。

 

等加速度直線運動


 一直線上を一定の加速度で進む運動を「等加速度直線運動」という。例えば10m/sで運動していた自動車の速度が、1秒ごとに12 m/s→14m/s→16m/s→…と変化していくとき、この自動車は一定の加速度2m/s2で等加速度直線運動をしているという。

 

 この運動の様子をv-tグラフ上で表してみよう。すると、切片10,傾き2の一次関数となる。この関係を式で表せば、

となる。切片10m/sはt=0における速度、傾き2m/s2は加速度だから、これらをv_0,aとおけば、一般的に、等加速度直線運動をする物体の速度vと時間tの関係が、

と表せることが分かる。v_0を初速度という。

 

 また、等速直線運動ではv-tグラフの面積が移動距離を表していたことを思い出そう。実は、このことは等速直線運動以外にも成り立つのだ。そこで、等加速度直線運動のv-tグラフで囲まれた面積を計算することで、この運動における変位xと時間tの関係を知ることができる。

まとめ

  • 等加速度直線運動の速度の式
  • 等加速度直線運動の変位の式

問題

 静止していた自動車が動きだし、一定の加速度4.0m/s2で速さを増している。この自動車が動き出してから3.0秒後の速度vと変位xを求めよ。

→まず速度vを求める。等加速度直線運動の速度の式より、

 よって、12m/s

→次に変位xを求める。等加速度直線運動の変位の式より、

 よって、18m

 次のような状況を考えよう。初速度4m/s,加速度2m/s2で等加速度直線運動を始めた物体がある。速度が6m/sになるまでにこの物体が進んだ距離は何mだろうか。前回求めた2つの式は時間と速度、時間と変位の関係式なのですぐには求められない。しかし、速度vの式を使って

速度が6m/sになるまでの時間tを求め、これを変位xの式に使うことで、

移動距離を求めることができる。

 

 なぜ2つの式が必要だったのかというと、この2式はどちらも時間t含んでいるからである。だから、時間を考えなくてもよい問題であっても、一度、片方の式で時間tを求めておく必要があるというわけだ。

 では、初めから時間tを含んでいない式があったら便利ではないか。というわけで、2式からtを消去することで、目的の式を導いてみよう。作り方は今の計算方法と同じ。速度vの式を使って時間tを求め、

これを変位xの式に代入して変形していく。

両辺に2aを掛けて、

これで、等加速度直線運動の3つめの公式、tを含まない式が導けた。

では、この式を使って、はじめの問題を解いてみよう。

簡単になった。このように、3つめの式を使うことで簡単に解ける問題もあるが、覚えていなくても他の2式で求めることもできる。慣れないうちは2式で解く練習をして、余裕ができたら導く練習をして、徐々に3つの式を使いこなせるようになっていこう。

 まとめ

加速度が負の場合


 初速度6m/s,加速度-2m/s2で等加速度直線運動をする物体の様子をv-tグラフに表すと、次のようになる。

 

v-tグラフを見ると、3秒後の速度が0になっていることが分かる。速度が0ということは、この物体は等加速度直線運動を初めて3秒後に静止するということだ。そして、v-tグラフの面積を読み取ることで、静止するまでの移動距離を求めることもできる。

その後も同じ物体が等加速度直線運動を続けたとしよう。すると、速度が負の値になる。これは物体が逆向きに運動するようになることを表している。

再びv-tグラフの面積に注目して欲しい。三角形が2つ得られ、左上の三角形の面積は速度が0になるまでに物体が進んだ距離を表していたが、右下の三角形の面積は折り返して逆向きに進んだ距離を表している。このことから、左上の面積が9m,右下の面積が4mであるとき、物体の移動距離が13m,変位の大きさは5mであることが分かる。

  • 移動距離…左上の面積+右下の面積
  • 変位…左上の面積-右下の面積